トランプ政権の政策不安定性が金融市場全体に波及する中、ビットコインをはじめとする暗号資産市場も大きな転換期を迎えている。経営コンサルタントの大前研一氏が指摘する政権の不透明性は、デジタル資産への投資戦略にも影響を与えており、市場参加者は従来とは異なる視点でのリスク評価を迫られている。
政治の不確実性が暗号資産市場に与える影響
マネーポストが12日、報じたところによると、大前氏がトランプ大統領が2029年の任期満了を待たずに政権を投げ出す可能性を指摘している。実際、2026年11月の中間選挙を控え、すでに主要州知事選や市長選で民主党候補が勝利を重ねており、政権の支持基盤には亀裂が生じつつある。
暗号資産市場にとって、この政治的不安定性は両刃の剣である。一方では規制緩和の継続性に疑問が生じ、他方では伝統的資産への不信感から代替投資への需要が高まる可能性がある。ビットコインは2025年10月に1BTC=12万6000ドルの史上最高値を記録したが、その後は9万ドル前後で推移しており、政治情勢の混迷が価格形成に影響を与えている。
関税政策の迷走も市場心理に影を落としている。トランプ政権は中国に対し最大145%の追加関税を表明したものの、その後125%から34%へと大幅に引き下げた。日本や韓国に対する関税率も対米投資と引き換えに緩和されるなど、政策の一貫性欠如が顕著である。このような予測不可能性は、暗号資産市場のボラティリティを高める要因となっている。
トランプ一族の暗号資産ビジネスが示す腐敗的構造問題
大前氏が問題視するのは、トランプ大統領の一族企業が規制緩和を背景に1年で約1兆5000億円規模の暗号資産ビジネスを構築したという事実である。政権発足後に暗号資産規制を大幅に緩和する一方で、自らの一族企業がその恩恵を最大限に享受する構図は、市場の公正性に対する疑念を生んでいる。
米証券取引委員会は2025年2月、トランプ大統領の公式コイン「$トランプ」を含むミームコインが有価証券に該当しないとの判断を示した。
これはゲンスラー前委員長の退任後、暗号資産に対する規制姿勢が180度転換したことを象徴している。大統領令により401k(企業型確定拠出年金)での暗号資産投資も解禁される方向にあり、制度面では追い風が吹いている。
しかし、政権トップが暗号資産で莫大な利益を得ている状況は、インフレで生活苦にあえぐ米国民との間に大きな乖離を生んでいる。2025年9月の年間インフレ率は3%と1月以来の最高値を記録しており、こうした経済的苦境の中での一族企業の暴利は政治的リスクを高めている。
2026年の暗号資産市場展望と投資戦略の転換点
ゴールドマン・サックスは2026年について、規制環境の改善が機関投資家の暗号資産採用を加速させる主要な推進要因になると予測している。現在議会で審議が進むCLARITY法案(暗号資産市場構造法案)の成立により、SECとCFTCの監督権限が明確化されれば、機関投資家の参入障壁は大きく低下する。
マネックス証券の分析によると、2026年のビットコイン価格予想レンジは上値20万ドル、下値7万5000ドルとされている。ただし、FRBの金融政策やAI半導体株の調整リスク、暗号資産関連企業の財務リスクなど、短期的な不確定要素は多い。
注目すべきは、ビットコインの市場特性が変化しつつある点である。暗号資産調査企業K33によれば、オプション市場ではプットオプションの予想変動率がコールオプションより高く評価されており、これはビットコインが投機資産から伝統的なマクロ資産へと成熟しつつあることを示している。
一方、大前氏が指摘する政治リスクは依然として無視できない。中間選挙で共和党が敗北すれば、トランプ大統領が任期を投げ出す可能性があり、その場合、後継となるJ・D・バンス副大統領の下でより過激な政策が展開される恐れがある。政権の安定性欠如は、暗号資産市場にとって最大のリスクファクターとなり得る。

